中関白殿(=道隆)、また、御前にお仕えしている人々も、 「いま二度延べ させ 給へ。 さしつかえ。 [現代語訳] 次に、師殿(=伊周)が射られたところ、大変に気後れなさって、お手も震えていたためでしょうか、 的の近くにさえいかず、見当違いの方角を射られたので、 関白殿(=藤原道隆)は、顔色が青くなってしまいました。
(さて)この双六の勝負は、(いったん)打つことに夢中になってしまいなさると、お二人とも、はだかになって、腰のあたりにだけ(着物か何かを)お巻きつけになって、夜なかから明け方までおやりになります。
2原文:『師殿の南院にて、人々集めて弓遊ばししに、この殿渡らせたまへれば、思ひがけずあやしと、中の関白殿思し驚きて、いみじう饗応しまうさせたまうて、下臈におはしませど、前に立てたてまつりて、まづ射させたてまつらせたまひけるに、師殿、矢数いま二つ劣りたまひぬ。 先生の 「君の心でそれを止めるだけの覚悟がなければ。
3入道殿、矢戻して、やがていでさせ給ひぬ。 上記の「せ」と合わせて二重尊敬となっている。 「とりあえず、式神(しきがみ)一人が内裏(だいり)に参上せよ」 と(清明が)申し上げると、人の目には見えない何物かが戸を押し開けて、(天皇の)御後ろ姿をお見申し上げたのでしょう、 「ただ今、ここをお通りになられているようです」 と答えたということです。
15給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。 こよなう・・・この上なく。 」と申し上げて、 延べさせ給ひけるを、やすからず思しなりて、 延長なさったところ、(道長は)心中穏やかでなくお思いになって、 「さらば、延べさせ給へ。
7べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。 つ =完了の助動詞「つ」の終止形、接続は連用形 と仰せらるるに、初めの同じやうに、的の破るばかり、同じところに射させ給ひつ。
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